自己満の味噌煮

小説書く。難しい。

World tree is me. -3-

それから、一晩経った。
バックスからの連絡でカニーナの安否、故郷の状況を把握することは出来た。
本当ならもうこの頃には次の町には着いていただろうに…などとも考えたが、こればっかりは仕方がなかった。
やっと出発という頃、ロビーに可笑しいくらいにっこりとした笑みを浮かべる彼がいた。
「……バックス、何してるの?」
「いや、ほら、一緒に行くつもりでさ」
「………………ああ、そうだったわね」
忘れてたわ、と付け足すと彼はがっくりとした様子を見せる。
彼は一々、感情の表現が大袈裟だ。
「冗談。別に良いけど、貴方此処に他の目的はないの?」
「特にないから言っているんだよ」
「……そう。じゃあ行きましょう、バックス」
また笑顔を見せた彼に口元だけの笑みを見せ、二人で外に出た。
外は変わらない冬。楽しそうに舞い踊り、白銀の大地の一部になる雪を見ながら、柔らかいそれを踏みしめる。
さくさくという不思議な感触が、此処は故郷ではないことを私にはっきりと理解させる。
履き慣れないブーツをじっと見つめながら歩いていると、彼が「あのさ」と私に話しかけた。
「なあに?」
「逃げてきたっての、嘘だけど嘘じゃないんだ」
「どういうこと?」
彼の言うことの意味が分からず、首を傾げる。
彼は変な人だ。元々そう思っていたが、何だか言動もふわりとして、空気みたいに掴みにくい。
「本当は俺さん。育ちはこっちなんだ。でな、生まれ故郷に帰ってみたら、ひっどい場所になってたのさ。だから、逃げてきた」
「……そういうことね、嘘だけど嘘じゃないなんてからかってるのかと思ったわよ」
私がそう言って目を逸らしてみると、ごめんごめんと言いながら彼は視界に入ろうとしてくる。
その姿に私がふっと笑うと、大人気ないことに気づいたのか照れながらははは、と笑った。
「それじゃあ、私も目的を話さなきゃいけないわね。……私は、この頭に生えた世界樹の端くれを世界樹に返さなきゃいけないの」
「ああ……“ユグドラシル・ホリック”ねぇ」