自己満の味噌煮

小説書く。難しい。

地下に隠された決意の文書

森の中での生活、コーラルとの家事当番、町との交流。

何もかもがいつまでも一緒、彼女と会ってからも一緒。

ちょっとトラブルがあっても一緒、どんなに苦しくても一緒。

ずっと一緒だったものが最近崩れ去った。

コーラルが死んだ。町でもたくさんの人が死んだ。

それからは毎日一緒が狂ってしまって、いつもと違うものになった。

ずっと一緒だったことに、安心や信頼があったんだと思う。

俺はそれに慣れていたから気付かなかったけど、失った後に気付くと大変だ。

物音が怖い、一人が怖い、何もかもに不安を感じた。

俺は元々親友も彼女も守れない情けない男だったが、それ以下に成り下がってしまったんだ。

俺はいつも支援に回って、誰かを盾にして生きていたことを実感してしまった。

それからは今考えても、彼女との隙間が出来てしまった気がする。

彼女が何かを隠したがっているのは何となく察している。

でも、其処に踏み込めないのは俺が情けないのと、踏み込める力がない気がするからだ。

彼女は、俺より遥かに強い。

俺より、というか、彼女の強さは彼氏と呼ばれる立ち位置にいる俺にも未知数だった。

こう言っては彼女が傷つくかもしれないけど、あまり踏み込みたくなかった。

 

別に彼女に対して愛想が尽きた訳じゃなかった。

それどころか、俺はとっても不安だった。

彼女のことを忘れた日はなかった。

信頼しているけれど、いつか突然誰かにやられてしまったら俺は絶対に後悔する。

いつかは俺が彼女についていき、そして彼女の盾にならなければいけないと考えた。

その覚悟も、最近は出来てきた。

 

それでも条件は揃わない。

彼女が俺についてきて欲しい、俺がいなきゃいけないと打ち明けてくれるまでは、俺の独りよがりだからだ。

俺が此処まで話してきたことは全部、彼女からはまだ打ち明けられていない、今現在の俺の中の情報での憶測。

彼女がもし、俺に打ち明けてくれたら、その準備はできている。

条件はその時揃うんだ。

その時俺は“弱虫”や“情けない男”の肩書きを脱ぎ、彼女の盾として新しく生まれ変われる。

彼女ならいつか俺を頼ってくれる。

俺はずっとそう信じる。

本当は日記にしようとしていたこの一部分のメモと、その時の為の武器や防具を一緒に地下に隠そうと思う。

いつかこれらを使って、これを読んで、彼女と笑い合える日を、俺はずっと信じている。

彼女が善でも悪でも、いつかはきっと彼女と笑ってみせる。