自己満の味噌煮

小説書く。難しい。

全部壊した男

手を結んで、開いて。繰り返す。

手はちゃんと残っていた。

起き上がろうと下半身に力を入れる。

足もちゃんと残っている。

姫と目を合わせようと振り向く。

姫はもう何も残っていなかった。

 

またこの世界に生を受けたが、やっぱりこの夢ばかり見る。

帝都が襲撃されてすぐのことだった。

もう何十年も前のことだが、今でも鮮明に思い出せるくらい胸が痛んだ出来事だった。

今でも胸が痛む出来事だ。何度も夢に見て、何度も冷や汗をかいた状態で起き上がってしまう。

その度に俺はコーヒーを飲んで、窓の外を眺めてみる。

まだ外の世界はボロボロだ。

あの時の帝都のように、何もかも焼けてしまっている。

しかしこれは全部俺がやったことだ。

姫を取り戻したくて、何百もの人の命を潰して魂さえもとことん利用し尽くした。

俺は最低最悪の人間になっていた。いつの間にか。

今は許してくれているが、コノシェンツアにはとても酷いことをした。

妻も子供たちも頻死に追いやったのだから、許してくれなくても仕方のないことを彼は許した。彼は寛大だ。

逆に、佐々木啓史…ケージは俺のことを一生許さないと言った。

彼の大事な人を消したのは間接的にだったが、それでも元凶は俺だ。

そんな俺のことを許さないと言った。これが普通だ。

一生このことを忘れるなとも言った。

俺に幸せになる資格はないとも言った。

それもそうだろう、分かっている。

だからこそ苦しみや後悔が溢れて止まない。

だからこそ二度目の恋が叶わないのも、一度目の恋を引き摺っているのも苦しいのだ。

俺はいつまでたってもこの二つの恋の間を行ったり来たりしている優柔不断な男だ。

行ったり来たりしてる癖に、それを成就させる資格はない。

苦しんでも苦しんでも、それは俺のした罪への罰だ。

仕方がないんだ。そう言い聞かせてる。

でもそれは逆に、あの人の好意を裏切ることでもある。

俺はもっと苛まれるのだ。二つの恋と自分の罪と罰に。

俺がしてしまったこと全部に、これからも苛まれながら生きていく。

死んでしまった思い出と、今も生きている思い出に挟まれて、優柔不断に生きていくしか道はない。

 

こんな俺でも優しくしてくれるあの人の声を思い出して、また俺は眠れなくなる。

地下に隠された決意の文書

森の中での生活、コーラルとの家事当番、町との交流。

何もかもがいつまでも一緒、彼女と会ってからも一緒。

ちょっとトラブルがあっても一緒、どんなに苦しくても一緒。

ずっと一緒だったものが最近崩れ去った。

コーラルが死んだ。町でもたくさんの人が死んだ。

それからは毎日一緒が狂ってしまって、いつもと違うものになった。

ずっと一緒だったことに、安心や信頼があったんだと思う。

俺はそれに慣れていたから気付かなかったけど、失った後に気付くと大変だ。

物音が怖い、一人が怖い、何もかもに不安を感じた。

俺は元々親友も彼女も守れない情けない男だったが、それ以下に成り下がってしまったんだ。

俺はいつも支援に回って、誰かを盾にして生きていたことを実感してしまった。

それからは今考えても、彼女との隙間が出来てしまった気がする。

彼女が何かを隠したがっているのは何となく察している。

でも、其処に踏み込めないのは俺が情けないのと、踏み込める力がない気がするからだ。

彼女は、俺より遥かに強い。

俺より、というか、彼女の強さは彼氏と呼ばれる立ち位置にいる俺にも未知数だった。

こう言っては彼女が傷つくかもしれないけど、あまり踏み込みたくなかった。

 

別に彼女に対して愛想が尽きた訳じゃなかった。

それどころか、俺はとっても不安だった。

彼女のことを忘れた日はなかった。

信頼しているけれど、いつか突然誰かにやられてしまったら俺は絶対に後悔する。

いつかは俺が彼女についていき、そして彼女の盾にならなければいけないと考えた。

その覚悟も、最近は出来てきた。

 

それでも条件は揃わない。

彼女が俺についてきて欲しい、俺がいなきゃいけないと打ち明けてくれるまでは、俺の独りよがりだからだ。

俺が此処まで話してきたことは全部、彼女からはまだ打ち明けられていない、今現在の俺の中の情報での憶測。

彼女がもし、俺に打ち明けてくれたら、その準備はできている。

条件はその時揃うんだ。

その時俺は“弱虫”や“情けない男”の肩書きを脱ぎ、彼女の盾として新しく生まれ変われる。

彼女ならいつか俺を頼ってくれる。

俺はずっとそう信じる。

本当は日記にしようとしていたこの一部分のメモと、その時の為の武器や防具を一緒に地下に隠そうと思う。

いつかこれらを使って、これを読んで、彼女と笑い合える日を、俺はずっと信じている。

彼女が善でも悪でも、いつかはきっと彼女と笑ってみせる。

執念深く愛を求める

「飽きないなぁ、ヤスラ」

町から離れた、吹雪で荒れる氷山の上。

遠い世界から、此処まで来てしまった部下(弟子でもいいかもしれない)の執念深さにため息が出そうになった。

彼はいつもの目つき、まるで敵でも見ているかのような睨みつけ方で此方を見つめている。

その目は上司にする目かな、とよく問うのだが彼がそれを止めたことはない。彼はまだ、とっても長い、終わりそうにもない思春期の真っただ中なのだ。

「彼のことも、あの町の人のことも諦めないか?…いや、私は諦めという言葉は嫌いだよ。でもねぇ…そういう問題じゃないって分かってるだろ」

こうやって諭すような言い方をしないと、彼は私にだって襲いかかってくる。

最近の彼は乱暴で、獰猛だ。

いや、最近じゃないのかもしれない。

“私が来た時にはもう”乱暴になっていた。そう言った方が良い。

この乱暴さと思春期に入った原因は多分この二つだと思う。

私ともう一人の弟子のエーアストが此方に来る前に、彼はリタルドタウンを一度救って英雄と呼ばれるものになったらしい。

それから、彼は妙に其処に執着している。

もう一つ、もう一つは彼のお気に入りの男性のこと。

ヤスラはそのことにも深く執着している。

きっと彼とは離れたくないんだろう、その気持ちは苦しいほど分かる。

でも、容認出来るかと理解出来るかは違う。

「分かってるだろう、ヤスラ。私はあちら側では最高神に近いけど、こっちでは好き勝手出来ないんだよ。君も同じだよ」

「煩い。帰りたきゃ帰りゃいいし、勝手に使わなきゃいいんでしょ、能力とか」

「…職権乱用みたいになるけど、君には新しい縁を結んであげるから…「はぁ?論外だよ。それで帰ってくると思って言ったなら、アモルは脳が腐ってきたんじゃないの?」……あのね、ヤスラ」

こういうのには慣れているので、怒ったりはしないが呆れはする。

私も愛の神だとは言いつつも、実際は生き物達の恋を上手く結び付けてやるくらいしかやっていないから、ヤスラの中に芽生えた感情を本当は結び付けて応援しなきゃいけない立場だ。

こうも微妙な場所で、弟子を運命に墜落させてしまったのは後悔している。

何となく予感はしていたし、不安だったのに防げなかったのは私の所為なのだ。

今もずっと情けをかけてきたつもりだが、もうちょっと待ってあげなきゃいけないだろうか…。

「………分かったよ。もうちょっと待つよ。でも、早くしなよ」

「そんなのいつになるか分かんないよ?アモルなら無理矢理連れ帰ることも出来るんじゃないの?」

「出来ないことはないけど、弟子が頑張ってるところを無理矢理っていうのはね」

「…ふぅん」

今度は半信半疑な目でヤスラは此方を見た。

だけど、私はぼんやりと違うことを考えていた。

この世界は殺伐としていながらも、多くの愛がある。

ヤスラのことを理由にしながら、私も帰りたくない気持ちがあることを理解していた。

私自身にも、ヤスラ自身にも、多分エーアストにも、まだ猶予期間が必要な気がした。

此方の神様にまた怒られても仕方がない状況になってしまっているけど。

もっと人々の縁を結びたいし、人々と出逢いたかった。

「…アモルも同じじゃないの?その顔、大分前の自分に似てる」

「…そんなことないよ。あの時のヤスラの顔の方がもっと酷かったさ」

「うわ、自分のこと棚に上げといて何言うんだこの上司」

私の願いが満足に叶えられなくても良い。

私の弟子がこの世界で何か一歩を踏み出してくれればいい、と思う。

そしてまだ殺伐としているこの世界が、もっと愛に満ち溢れればいいとも思う。

 

願わくば、その愛のほんの少しを拾って、私が貰いたいとも思う。

 

 

神にも人間にも、そうでないものにも、願いとは尽きないものだとつくづく思った。

七夕だぞ!全員集合!!

ジェダイト「……ってことで、貴様等、願い事を書け」
スピネル「上からッスね!?」
ネフライト「皆さん分、ありますよ~」

※此処から願い事の乱立ッ!!

~しぐれっど・みどないと・いのまい組~
ジェダイト「ロベリアと居られれば何も要らんな」
ネフライト「僕も皆さんと、そしてウラノス君と楽しく過ごせれば……」
オブシディアン「此処は俺様らしく激しい何かが起きろ!って言いてェけど、スズのことを思って彼奴とずっと一緒にいたいと願ってやるぜ。そ、そっちが本心じゃねーからな」
ヴォイド「オブシデ長い。俺はねー、俺も彼女欲しいな~!こんだけ苦労してるんだしさぁ」
スピネル「俺はやっぱ、ラグエルを支えられる男にもっとなりたいッス!」
グリッシュ「…………身の周りの人々の安全、か」
イポメア「えー、シレンティが元気な姿が一生拝めますように、かなぁ?」
コーラル「…メープルに会いたい、もっとらぶらぶ……したい」
アトリア「あーあー、リアルが充実してる人達の話にはうんざりだわ。私はこれからも、楽しく生きられるならそれでいいのよ」
ジルコン「ライラの安全と~、翠の安全と~自分の安全と~……欲張り過ぎかな?」
ロードナイト「………不幸じゃなければ、平凡でもそれで……」
蜻蛉「ん~、キャビア君とか、ヴィオレットの身の安全が確保されてるなら、嬉しい」
宵闇「僕は…シナモンの傍にいたい、かな」
常闇「はぁ、俺?……もう片想いの件は諦めるかちゃんと告白するかどちらかの勇気をくれ、くらいか…」
小春凪「常闇は優柔不断だね。私は私の漫画が売れてくれたら良いね」
クオーツ「んー?早くエドゥアルトの顔を見たいな。声も勿論好きだけど、目を合わせて話したいんだ」
ナイトメア「食に関しての知識を増やす……?」
シセラ「嫁になる為に必要なスキルを伸ばす!」
マカリエル「我が子達と妻が幸せに過ごせますように、ですかね」
シャティエル「マカリエルと同じ。あと、アニス君にも元気でいてほしいわ」
レリエル「ちょっと!アニスは私のだよ!アニスともーっと一緒にいたいなぁ」
耀「……マカロン、作れますよう…に?」
ゲンマ「……デートができますように」
ダイオプサイド「罪を出来るだけ償えますように、だ」
ヴァルナ「私もデートができますようにだな…取り敢えず休暇ください」
硝子「今年こそ疲れて爆睡してるガーゴイルの顔を美顔ローラーでコロコロできますように」
ガーゴイル「仕事が増えないのと硝子の悪戯が成功しませんように」
ソーダ「間違いは繰り返しませんよーに!」
オプション「……あの人にまた会えるといいわ…」
ヨクト「…もっと暇になるように」
メキ「…取り敢えず、トレニアとの仲が進展したらいいなってのと、ヴィオレットとまた話したいなっての」
ラジアン「仕事が欲しい」
パニール「…そろそろ休暇が出ますように、そして寝れますように、あわよくばプルート君に抱きつけますように……!」
ノルマ「パニールが必死だな……。俺はセレーネの無事と森の安全かな」
メンサ「寂しいとか、そんなんじゃないけども。また楽しい会話がしたい。…タ、ターコイズ、とか」
ラピスラズリ「皆が元気で私も元気でいられますように、だね!」
清威(ガーネット)「野菜ジュース一年分が降ってきますように」
パール「病弱を治したいです!」
ダイアモンド「…大切な人が辛い思いをしないように、かね」
ヒメジョオン「猫が飼いたいな~。だから、猫を飼うお金が貯まりますように!」
グラディス「たくさん食えますように、と…ナツメグに会いてぇよ…」
メラル「……弱虫、早く治したい……」
レビア「現状維持できますよーに、かな?」
ゼーレ「…会いたいな」
ミューデ「お菓子をたーくさん食べたい!」
ルシファー「兄さんと仲良くやって、皆とも交流していけたらいいな」
デルト「……願って叶えられるような願いはないが、手を戻したいな」
霖「ま、迷いますねぇ…兎に角、積極的になれますように、です」
柵「いつもの四人で健康に過ごせるよう願いたいわ」
榎「……交流させてください」
遠永「榎と同じく!!多くは望まないから!!リア充になりたいだなんてこれっぽっちも!!!!思ってないから!!!!!」
クコ「和族の伝統を受け継ぐしっかりとした人格者になりたい、だな」
クチハ「御姉様と一緒。私も頑張らなくては」
コトブキ「お気楽能天気生活できますよにっと」
タチバナ「……コトブキが仕事しますように」
リヴァロ「俺はまあ何も起きなきゃそれでいいが」
瑠間「もうちょっと裕福な暮らしがしたいわ」
涼暮月「またあちらの世界に戻りたいものです」
晩夏「…俺もです」
神楽月「タロットを新調できたらいいですねぇ」
シャベラ「死ななきゃいいよ、死ななきゃ何か起こるさ」
ホルン「ガデルと一緒なら何でもいいわ!」
ガデル「俺もだよホルン!それに俺ら死んでるしな!」
シン「マカロンを彼女に……届けたい」
ヘルプ「ティエラの照れた顔が見たいな、恥ずかしくて死にそうになってるみたいな顔が」
フィーネ「そもそも私達が叶える側…じゃ?ダウトがいい子に育ってくれれば良いか、な」
ティーシェ「お日様の暖かさを体感したいです!」
ベルーガ「んー…お料理上手くなる!の!!」
プリマベーラ「特にないわ。でも、お話相手が欲しいかしら…」
トルマリン「ぼ、僕は男らしくなるんだ!」
ベネトナシュ「今のまま何にもねーように。また悪いことしたくないし」
セレスティン「僕?…は、まあ、いおりんやモノクロちゃん、楓魔とかが元気だといいなって思うよ」
エーアスト「早く国をちゃんと統一したいな…」
エレメント「私はお兄ちゃ…お兄様の足を引っ張らないようにしたい!」
レベッカ「…幸せになりたい」
ドッペルト「えー、人殺しの才能を捨ててぇな」
ミラージュ「も、もっと……あ、あの人に甘えたい…」
ノーム「妖精達が平和だと思うならそれでいいんじゃない?」
サルガス「依頼がもっと増えてほしい…金稼ぎたい……」
アリアト「これ以上罪人が増えませんように、です」
イザール「幼なじみ達が元気でいられますよーに、だね!」
アミュル「アーキペラゴの平和を望みますっ」
クロノス「クーに舐められないようにしたい」
クー「クロノスを弄りたい!」
ネメシス「クロノス様がお変わりなくいられますように、だね」
フェンガル「おっぱい揉みたい」
ディーテ「フェンガル、恥を知りなさい。誰も職務怠慢無きよう、願いますよ」
イザベラ「…友人が欲しいわね」
レフト「んー?なんにもなくていいさ、のんびりできりゃ!」
ロジカー 「マスターが笑いますように」
ロザリス「…ノルタジアさんと、また話したいです…」
ギゼン「お前ら皆不幸になれ」
ドロワ「ギゼンの暴走よ止まれ」
グルーブ「いつか罪人の場所から出てえなー」
晴ノ凌帝「セフレ募集」
ヴェロニカ「凌帝キモッ。ヴェロニカはダストとたくさんいたいなっ!」
あずき「も、もっとボンキュッボンになりたい!」
ドルミーレ「力の抑制の成功と、ソーレ君との時間を願うよ」
アリオト「……弟の胃に、穴が開きませんように」
マシン「……ヒドラに…愛してると言いたい」
簪「簪、お友達ほしーの、よ!」
チェック「…………」
ムイ「ん?ご主人は出番が欲しいんだな!俺もだー!!」
兎弥「僕は皆と遊んで仲良くなりたいな」
海神「自分デも、機械を作レるよウニ、なりタいな」
トロキア「こ、今度こそ鉄君に気づいてもらえますように!!」
テスカ「混沌が増えてくれ」
風見鶏「……お姉ちゃん達と、過ごしたい…」
銅鑼「取り敢えず罪人の場所から出せ!話はそれからだ!」
フェルゴン「銅鑼と同じく。今のままじゃ何も叶えれやしない」
モデウール「うっうー」(強行突破しようよ)
那由多「私は、まあ…もうちょっと色々、チャレンジしたいかな」
容「白虎といちゃいちゃしたい、てか付き合いたい、正式に」
アルデバラン「……皆が俺を避けるのやめますように」
ヌビール「ミイラ作りうまくなるよーに!」
ヤスラ「…ヌケガラの僕に対する好感度があがりますように」
ヴァジュラ「メキに好かれたい」
ディシル「今年は月華にたくさん幸せを運べますようにじゃん!」
ダウト「だうだう!」(ご飯食べたい!)
囲炉裏「ドSな人と愛し愛されしたいなぁ」
ルナ「ブロードと一緒にいたい」
ブロード「お、俺もだ、ルナ。俺もルナと一緒にいたい…」
エプレ「今年はたくさん本を読めるといいな」
ポルプ「症候群が治るといいんだけど…」
ビード「……光に慣れたいな、そろそろ」
蝉尽火「頼りになる男になって、暁をちゃんと惚れさせたいなあ…って」
魅始亜「海が綺麗であるならいいねェ」
プラリネ「特になにも。花が売れればいいわ」
時間泥棒「セレナーデちゃんにもっとこっち向いてほしいよ…」
.@「……時間泥棒が自重してほしいかな」
試作品「ヘルプとまた馬鹿なことし合いたいな」
レゾネート「ドージュの反抗期が早く終わりますように」
ドージュ「先生の過保護が早く終わりますように」
檜「仕事がたまらないように……ですね」
18号「えっちな娘が欲しい」
G81「……誰かと触れ合い、たい」
ジーク「おっぱい欲しい!!」
ルーガ「盗撮したい」
現P「男でもいい」
ケラスィア「なんだあの連携。私は血を提供してくれる人間が欲しいな!」
ジェミト「俺かー…俺は運命の出会いが欲しいな!なーんて…」
クキ「メキが元気そうならいいわね、ふふ」
ギロチナ「あう……外でたい…」
レーゲンヴルム「まー、隠居的な感じで生きてけたらいいかね」
フォカラー「ギヒッ、俺ぁまた出番をもらいてぇな!!」
バルバール「僕も僕も!!もっと話したいよ!」
アプリオリ「………………」

らくえん・ぱんちんぐ・いんふぇるの組~
コノシェンツア「楽園の解明と、家庭円満だね」
ジュエ「地図作成バリバリしたい!」
ケージ「帰りてぇな…」
サッキ「ケージや皆と仲良しこよしする!」
エオニオ「計画を上手くこなしたいであります」
科学者K「私は私のやることをちゃんと達成したいわね」
シロニリア「夫が無事に帰ってきますようにだわ」
ヨン&ネッセ「パパと遊びたい!!」
醒「自分の気持ちに嘘をつかないようにしたいな」
上賀茂「おなごとらぶらぶしたいのう」
下鴨「上賀茂が死にますようにと、超話が合う人に超会いたい!!」
広隆「……黒髪が欲しい」

~アルアル・世界樹組~
ヤド「……メルリ…」
ナジャ「メルリさんのお側にいたいんですね?ふふ…私は月にいる神様に会いたいですわ」
ジズア「絶対師匠に勝つ!!」
サレハ「旅が事故なく続くように、ね」
イブラヒム「レイラに会いたい…」
スィナー「最高の絵を描く為、努力を惜しまないようにするように」
ムバラク「このまま帰れませんよーに!!」
ファラフ「にーやん可笑しいで!帰れますよーに!!」 カルカダン「ボスの権力が続きますように」
アザリー「カルカダンは死ね…」
ダハブ「妹怖いジズア怖い。女難な俺を教祖さんが助けてもらえますよーに」
サイラス「森に誰も来ませんように…」
チェルフ「レーヴァさんとお近づきになれますように!」
シハーブル「売り物がたくさん売れて、皆に認められたいな」
シャロン「仕事放置してもばれないでくれー!!」
ジェレマイア「錬金術をもっと極めたいわ」
アトゥーサ「極楽生活を楽しみたいわね~」
カニーナ「皆さんの傷をもっと癒したいです!」
ヨスガ「俺は空気になりたい」
ナミル「貧乏から脱退を目指すわ」
ルゥルゥ「お水!欲しい欲しい!」
マルマル「お豆、全部消えちゃえばいい…」
ダフダア「がう!がうがう、狩り人からかうたい!」
ボス「俺はホモじゃないってカルカダンに言いたい……」
アリ「国に問題が、起きません、ように」
エリシェヴァ「もっと変な生物が増えますように!!」
カウィ「悪魔残滅」
ザーヒル「ナジャを俺のものにしたいね」
レイラ「皆が仲良く幸せに暮らせますように」
サフィーナ「皆が幸せを感じ、人生を未練なく過ごせますように」
バックス「サフィーナちゃんがずっと見守ってくれたら大丈夫な気がするねぇ。俺さんは楽も苦もしっかり受け止めて生きれますように、だ」

~世界観共有組~
エルネスタ「兄さんが、私離れをしますように…」
エンゲルベルト「切実な言い方しないでくれよ……。俺はいつまでも妹を守り続けたいだな」
ゲオルギア「新しい星を発見したいな…」
ラザファム「学者様らしいですね。俺は貴女が何処かで倒れてしまわないように、です」

~楽曲シリーズ組~
ワネットルターネ「豪遊をしちゃいたいわ!」
ショゼフ「痛覚が欲しい…」
クルミラ「今年も飽きずに美食を求めたいね!」
ウンディア「み、水……どうにか触れるようになりたいです!」
健太「身長が伸びれば…」
ユサ「……私の周りだけ冬になって欲しい」
太郎「戦争がすぐにでも無くなってくれればいいな!」 リヴェルリ「ショゼフさんに好かれたいな~」
リップル「……城内がもう少し綺麗になってほしいです」
ジングス「俺の生き方を邪魔するような奴はいなくなって欲しい、だな」
ソル「もっと大きい家に住みたい!」
良斗「……多くのものを食べたい……」
ハブ「コレクションがもっと増やしたいぜ!」
シバイ「新しい食器が欲しいもんだ」
ヤコ「美人に、なりたい…」
ラクレット「平穏が欲しいよ…はぁ……」

~論理論シリーズ組~
ヴァハザキ「道具を何個か増やしたいな」
ラロシテ「そろそろ定住できますように…だな」
トクサ「リア充爆発すりゃいーのに」
モナトス「でん、ぱ……増幅……」
ラリケリ「良い香りがたくさん開発出来るといいねぇ」
リリロキ「鳥さんの仲間がもっと欲しいな!」
シラニエール「流星をたくさん拾いたいねっ」
ザラルバー「……新しく幻獣と契約を結びたい」
ネースフィ「お客様にもっと私の舞いを見てほしーねっ!」
ペンネ「銀細工がもっと広まればいいな、です」
ダイセン「……あまり風が吹きませんように」
レラリーオ「誰かが山に侵入しませんようにかな」
ジギタリ「旅が滞りなく進むようにだ」
ハリビユ「恋文代筆がもっと減りますように…」
チガヤ「たくさん草原を航海したいってことよ!」
シニカラ「仕事をサボりたい」
ナーテト「100人一度に動けなくしたいね」
コタ・トタ・レタ「早く不老不死を治したい!」
ソリューム「和菓子をたくさん作りたいです」
キルミー「教会にあんまり人がこねーように」
師匠「三兄弟が早く死ねますように、うん」

~三ヶ条組~
デメトリアス「仕事が増えますようにだな」
ロロディス「なにそれ…仕事が減りますように」
イーロルデカ「お前ら……酒が買えますように」
フィフホルン「全員バカだな。毒舌スキルに磨きがかかりますようにさ」
デュランタ「…………。…おふざけを止めてくれますように」
ビビ「いちゃいちゃらぶらぶしたい!!」
タイタニア「もうちょっと力仕事が出来るようになりたいな」
チャギノミィ「きのこー!」
ロヒトリー「んん?チャミィは茸と和解したい?俺も竹とは和解したいよ~~」
キドクガ「死ねロリコン茸。俺はチャミィに変な茸がつかないようにだ!」
シグリ「スライム女でも愛してくれるなら彼氏募集だねぇ」
リュヌ「魔力がもっと強くなったらいいな」
テムサーフ「ナンパの成功率を上げたいぜ!」
ラクリマ「ふむ……まあ、自分の役割をしっかり続けたいな」

~24代目組~
ブライシュ「妻の笑顔があれば他は何もいらない」
ルチル「まあ、私も貴方の笑顔があれば生きていけるわ」
ドルミーレ「アーハイハイ、俺ぁ快楽さえありゃいいぜ」
キャメリア「独り立ち出来るように、努力ができますように!」
アモル「愛や恋が増えますようにだな、ふふっ」
エーアスト「おやっさんの健康を願うっす!あ、でも俺も彼女欲しいっす……むふふ」
アラギナ「実験体が欲しい」
愛逢月「いつも通り診察が進めばいいや」
鳴神月「友達欲しいよ、俺。ペットも欲しいよ」
キャレ「…………寝ていたい」
パルフェ「お姉ちゃんより上になりたいよ」
エラトマ「お金が足りないから、稼ぎたいな」
ヴォルガレ「人肉食いてー!!!!」
フィエリテ「うふふ…私の虜を増やしたいわね……」
トゥリステーサ「妹をもっと突き放したいわ」
リグレット「……ロイエの看病をしたい」
ロイエ「リグレットに迷惑かけたくない、な」








ジェダイト「……お、多いな」
ネフライト「どっさりですね…まあ、僕達は代表として頑張って飾りましょ」
ジェダイト「ああ……そうだな」
ネフライト「叶うと良いですね、皆さんの願い」
ジェダイト「ああ、叶うといいな…」

愛し君と狂った空間

気分良く、心地も良く、堕落する。
働き詰め、人の為に働き、あの世へ逝く。
__もういいと気付いた。そんなことをせずとも、良いのだと。
俺が働くのは、人の為に力を使ったりするのはお前の為だけで良いんだと。



「愛し君と狂った空間」



柔らかなソファを仰向けになって占領する。
占領するも何も此処は私の空間なのだが。
しかし此処がお前と俺の、二人だけで誰にも邪魔されない空間になったらと何度願ったことか。
あれから何年経ったのだろうか、お前とやっと再会したあの日から。
世界をも超えてやっとことで辿り着いたお前の体温に触れて、柄にもなくお前を抱いて号泣したあの日から。
お前はそんな情けない俺をずっと微笑みながらも撫でていてくれた。
鮮明に覚えているあの日から、もう何年もお前に会えていない。
だがしかし、お前に会えなくて死んだような生活をしていた前の俺と今の俺は違った。
俺はとても幸せに堕落をしたんだ。
お前を待つ、この時間さえも愛おしく、幸福な時間なのだ。
ロザリーの持ってきた紅茶を啜り、壁一面にある額に入れて綺麗に飾られたお前の写真を見渡して、またソファを占領する。
そして持ち歩いているお前の写真を手に取り、そっと傷のつかないように口付ける。
こんなに愛しているのに、お前が帰ってこないのは全てこの世界が悪いんだ。
神なんて何処へ行っても屑しかいないんだから、救いようがない。
そうだ、救われるべきなのはお前だけなんだから。

「ロザリス、ロザリー」
「「どうしましたか、マスター」」
「…あの花は」
「マスターがやっと愛する人の名前を教えてくれたので」
「そうですねぇ、マスターの大好きな“ロベリア”ですよ。あの花
「…ほう」
綺麗に飾られたその花を見つめた。
ただ気持ちが募って行くが、その分幸福な気分になる。
今日もお前の夢を見られそうだ、嗚呼、とても良いことだな。
ふ、と笑みを零してしまった。
「…よくやった。これからはこの花も積極的に飾ってくれるか」
「「仰せのままに、マスター」」
これでもっと、この空間は完璧に近づき、制裁の時は近づいていく。
お前を取り戻す日も近いということだ。
取り戻し、抱きしめて、あの日の感動をまた手に入れる。
あの日、スピネルを庇って瀕死になってからその夢ばかり見ていた。
お前を取り戻したい、また抱きしめたい、その温もりが欲しい。
冷えてしまった俺の肌に触れて欲しいと願った。
それはもうすぐ現実になる。
もう俺達の邪魔はさせないように、全てを殺そう。
お前と二人きりになる為に、俺が世界を創ろう。
心配するんじゃない、俺はお前の為なら何でも出来ただろう?
今だって、あの時、お前を追いかけて転生したあの時だって。
お前の為に出来ないことなどないんだ。
赤い糸は、まだ見えているだろう?
待っていてくれ、ロベリア。















「…ふん、貴様も私のことを可笑しいと言うか?
大体、考えてみろ。愛の形なんて常識で塗り固められているだけではないか。
そんな愛の形など要らない。愛の形なんて、俺達自身が創ってみせる。
法も、理も、なんだって犯すさ。
…ああ、喋り過ぎたな……



















さようなら 二度と生を受けてくれるなよ」

World tree is me. -2-

船を降りてから、私は少し観光をしてみた。
マントを買い、“チコート”と呼ばれる甘ったるくも美味しい温かな飲み物も買った。
街から離れた公園のベンチに腰を下ろして一つ息をついた。
温度が高いものが嫌いだったのに此処では真逆で、温かいものは大切だ。無ければすぐに凍死してしまう。
こんなに寒い日の公園には誰もいない。誰もいないからこそ此処を選んだのだけれど。
「……あ」
立った瞬間、突然視界が揺らぎ、手からチコートの入ったコップが落ちた。
目眩かと思ったが、違う。
世界が揺れている。
私の世界が揺れている。
「……う、わっ…!」
揺れに耐えきれずに私は体勢を崩して、倒れ込む。
視界の端に写った世界樹は、その大きな身体を揺らして地震に必死に耐えていた。
___嗚呼、私は彼処に行かなければ。

私が此処に来たのは、頭に生えた世界樹の端くれを元の世界樹に返す為。
世界樹が頭に生える、なんて言っても普通は中々理解が出来ないと思うけれど、そのままの意味。
ある日に頭から、鹿の角みたいな二本の枝が生えてきた。
本によると極稀に世界樹の一部に触れた者がなると書いてあったが、私はこの雪国、ハーゲルキュールには初めて来ているので、世界樹に近づいたのも初めてだ。
世界樹の葉や花弁は、此処とは正反対と言っていいような場所にあるアル・ミンタカト・アル・ハーラまで届くのか半信半疑でもあったけれど、この大きさなら飛んできても可笑しくないような気がした。
大きく、聳え立つ世界樹
止まらない地震の中でも力強く耐えている。
私は彼処へ行って世界樹に触れなければならない。
それが私の目的で、故郷に帰る為に必要なこと。
頭にぐるぐると目的や故郷のことが回っている。
視界は段々ぼやけていき、私は力尽きて、意識を手放した。

意識が回復した、しかし目をすぐには開けられなかった。
何やら騒がしく、私は何処かに運ばれたらしい。
しかも隣から人の気配を感じる。私は大人で保護者などいないし、そもそも此処から故郷は恐ろしい距離で誰かが来れる筈がない。
だからと言って身体はあまり痛まないしきっと軽傷だ。そんな患者にずっと看護師が付いてる筈はないと思う。
恐る恐る、目を開けてみる。
「……バックス」
「おはよう、…えっと」
「サフィーナ」
「おはようサフィーナちゃん」
何故此処に?と言う気力がない。
何だかこの人ならやりそうな気がしていたのかもしれないけど。
「大丈夫だったかい?公園で倒れていたのを“偶然”見つけたんだけどさ」
「それは偶然なんて言わないわ。“仕組まれた運命”と書いて“確信犯”ね。変態なの?」
どうも真意が掴みにくい相手に意地悪に、悪戯に話すのは癖で。
今回もそう。どうもこの人はまだしっかりと信用するには不安になった。
「酷いな、変態じゃないさ。これは本当にた、運命を感じたのさ。君と会うのは運命だったんだ」
「……適当ね。自分の勘しか根拠がないじゃない」
呆れとこの人の不思議さに苦笑いを溢してしまうが、彼は気にしないのかまた口元に笑みを浮かべる。
此処に来てから緊張していたのか、重荷が取れた感じもした。
それを察したのか彼はニヤリとする。
「俺さんが紳士過ぎて惚れた?」
「いや、惚れてはいないけど。…安心はしたわ。もう私は大丈夫だから、ロビーに行かないと」
「あはは、そうだねぇ。手、貸すよ」
「有難う」
彼に手を貸してもらって立ち上がってみたが、やはり足に軽く怪我を負っただけで其処まで酷くなく安心した。
そのままロビーに戻り、騒ぐ人々の中へ入る。
ふと気付いた、目の前にある大きなモニターに人が集まっていると。
そして私はそれを見て固まってしまった。
…………何故故郷が映っている!?
「え、ちょ、サフィーナちゃん!?」
私は人混みを掻き分け、バックスも置き去りにしてまでモニターの前へ出た。
戦争中に、地震によって割れた大地。人が何人も、蟻の巣に水を流し込んだ時みたいに、一度に死んでいく。
次に貴族街に起きた反乱が映される。
殺された、愛を紡ぐ貴族作曲家とも呼ばれたチェルヌイシェフスキー。
逃走する聖女ナジャと誰か二人。
一瞬映った、私の妹。
「カニーナ……!!!」
「サフィーナちゃん、ちょっと!」
突然バックスに腕を掴まれて振り向いた。
とても酷い顔でもしていたのか、バックスは眉をしかめて私を連れ出した。
もう一度人混みを掻き分け、いや、今度はバックスが掻き分けているのに続いて進んでさっきいた場所まで戻ってきた。
そしてバックスはさっきと違い険しい顔で睨みつけた。
「…感情だけで行動するのは危ないよ」
「…ごめんなさい、でも何で貴方が」
確かに彼が言っていることは冷静で正論だ。
此処で私が騒いだりしたら、アル・ミンタカト・アルハーラの者だとすぐばれてしまうところだった。
彼に引っ張られて、良かった。
でも逆に変にも思った。
何故この人は私にこうも親切にするんだろう、と。私と彼は会って一日も経ってないのに。
それを純粋に不思議に思ったし、多分他の人が同じ状況に陥っても不思議に思う筈だ。
だから私は尋ねてみた。
「……“確信犯”…“仕組まれた運命”を本物の運命にしようかねって」
「は?」
「俺さんが、君に付いて行っても良いよねぇ?」
にか、と彼はまた笑った。この人はとても表情が豊かだな…。
「どうしてよ、私の目的も知らないのに」
「付いていきたいだけだよ」
「……ちょっと、考えさせて。私、頭が可笑しくなりそうだわ」
頭を抱えて大きなため息をつく。
彼の気持ちは嫌ではないし有難いが、カニーナや故郷のことも不安で、あちらにすぐ戻ることも視野に入れている。
あまり長く考える時間はなかったけれど、兎に角考えたかった。
なのに彼はこう言った。
「君の故郷のことは俺さんの友人に聞けば大丈夫さ」
「…」
「君の妹は確か、かなりの権力を持っているだろう?俺さんの友人もまあまあの権力と人脈を持っていてね、そいつに聞きゃ分かるさ。ちょっと待っててよ」
「…出来過ぎてる、わよ」
「……そうかねぇ」
彼はまたにや、と笑う。
どうしてか、もう不信感は出てこない。
彼のことはやっぱり掴めないが、まるで昔から一緒にいたような、そんな気がするくらいに信用してしまう。
私は変になっているんだろうか?
私は私の世界であって、それをこれまで侵食されることも無かったのに。
「…サフィーナちゃん?」
「何でも、ないわ。……其処まで言うならお願い。カニーナの安否を確認してもらえないかしら」
「言われずともやるさ。君は君のやることがあるし、お金もないんだろう?それなのに帰るなんて、大変だし俺さんは反対だ」
「もう、貴方が私の何を知っていても何も言わないわ」
「君を知ってるんじゃなくて、あっちの貧富差や君の表情から読み取っただけさ」
__本当にこの人は、分からない。

World tree is me. -1-

私の出身地と違い気温は低く、寒空が広がっている。
口を開けばほわりと白くなって浮く息は魔法のようで、消えていくそれをぼんやりと眺める。
この大きな新型の船に乗る人々は多いが、雪という小さい塊がちらついて凍えるような寒さの外に出る者はあまりいない。
こうも寒くては仕方のないことか、と自分で勝手に話をつけて、温かい船内に入らずにいる者達を見やる。
雪雲がぎっしり敷き詰まった空を見上げながら高級そうなパイプを噴かす私より年上に見える男と、降っては手のひらで消える塊にはしゃいで走り回る子供達とその親。
そして、頭を隠す布が不自然じゃないかもう一度確かめる私。
こんなものか、と布の位置をずらしながら思っていると
「あの」
と低い声で誰かが私に声をかける。
声に気付いて振り向くと、さっきの男。
私は一瞬戸惑ってしまった。何か変だっただろうかと。
「……何でしょう?」
「寒くないのかい、お嬢さんは」
そうか、頭より何より私の服が変だと私は今更気が付いた。
そもそも何故気付かなかったのか?と思うくらい。
__どう見ても薄着過ぎる。
私の出身地、アル・ミンタカト・アル・ハーラはとても暑い国。今から向かう国とは真逆と言っていい程に。
元々体温が高く厚着も持ってない私がした最低限の厚着がこれだったが、他から見れば確かに薄着だ。
…それに、少し寒くなってきた。
そんなこと思いながら返答に困っていると、ついくしゃみをしてしまう。
それを見ると男は苦笑いをしながらも、私に上着を被せた。
「やっぱり寒いだろう?」
「……ごめんなさい。でも、私はお嬢さんなんて年齢では」
「おや、すみません」
さっき気になったことを言い返しつつも謝る。どうしても素直に謝るのが苦手な私に心の中で溜め息を吐く。癖を直さなかった自分が悪いのだけれど。
「へぇ、あの国から?」
「ええ。……しかし、貴方は…コンティネントストラナーから、なんて」
「ああ、まあ驚くだろうねぇ…。俺さんは彼処から逃げてきたんだし」
「……逃げて?」
「そう、逃げてだ。あんな国はもう忘れたい」
かなり話している間、お互い堅苦しい敬語も無くなってのんびりと話すようになっていた。
初めて国から出る私には、この人の話はとても不思議で半信半疑にもなってしまう。
何処かにコンティネントストラナー、ホライズンアーキペラゴ、マール・モーリェ…あと、何だったか、兎に角たくさんの国があると聞いた。
私の居た国は貧困民が多く、私もあまり裕福じゃなくてそれなりに苦労した。
そんな国では遠くまで行く人も少ない、遠くから来る人も少ない。そんな環境で、別の大陸など調べる方法もなかった。まさか、本当にあるとはな、と。
今から行く国は少し特殊だから知っていた、本当にそれだけ。
それから、私は気になったことに失礼だと思いつつも首を突っ込んでいった。
「……コンティネントストラナーは、そんなに荒んでいるの?」
「土地は綺麗さ」
「土地“は”?」
「うん。皆、心が荒んでるんだ」
「…戦争があったって、あれ、もしかして本当に?」
「そうだな……うん、あの頃くらいから…何か可笑しいのかもしれないな」
勿論自分も、と付け加えて自嘲する男は何だか遠くで見ていた時より老いて見える。
いや、老いて見えるは失礼か、上手くは言えないがかなり疲れているように見える。
「……もうすぐ着くかね」
「え、もう?…思っていたより、早いわ」
話をかなり長い間続けていたようで、もう目の前に島は迫っていた。
全てが真っ白に染まっている雪国である島。
近づくのにつれて寒くなり、船の中へ戻る子供達と親。
二人だけの船外になってしまい、どうしようかと思ったがすぐに港に着いたので少し安心してしまう私がいた。
「……着いたか、残念だ。もう少し君とは話がしたかったね」
「え?」
「いや、何でも?」
くく、と笑う男は私に向かって紙を投げた。
それを掴むと其処にはご丁寧に「バックス」と名前が書いてある。
背を向けて手を振る彼を、私もくすくすと笑いながら見送った。